「北海道マラソンにエントリーしたけど、完走できるか不安…」
真夏の大会ということもあり、私も走る前はそう思っていました。
たしかに、走ってみると辛いこともありましたが楽しい思い出や札幌の方々への感謝の方が圧倒的に多く残ったので、直前のタイミングで昨年のレビューを書くことにしました。
今回は、猛暑と雷雨との戦いで近年稀に見る過酷なレースとなった2023年大会に出場した私の大会レビューと北海道マラソンの攻略法、北海道マラソンならではの楽しみ、スタート前の大通公園の様子を詳しく解説します。遠方から参加するランナーも多いので、現地入りのタイミングや交通手段、ホテル選びにも触れますので、北海道マラソンの攻略本として役立てていただけたら嬉しく思います。
北海道マラソンの概要
北海道マラソンは毎年8月の最終日曜日に行われるフルマラソンの大会です。同じコースを使って車イスマラソンも同時開催されています。北海道マラソンを皮切りに、9月は北海道内、10月以降は全国各地でマラソン大会が始まっていくため、マラソンシーズン開幕を告げる大会と捉える人も少なくありません。「真夏の祭典」なんて言う人もいますが、近年では8月末になっても札幌市街の気温は真夏とほとんど変わらず、猛暑との戦いにもなっています。
大通公園がスタートとフィニッシュ地点となっていることから、ランナーエリアの設備が充実しており、周辺に多数のホテルがあることや交通の便がいいことからとても参加しやすい大会です。
定員:20,000人
スタート:8:30(※)
※スタートは完走予想タイムごとに2回に分かれるウェーブスタートです。第1ウェーブが8:30、第2ウェーブが8:45となっています。自身のスタート時間を確認して、間違えないように気をつけましょう。
年度によって変わりますが、出場する2万人のランナーのうち、半数以上が道外からの参加です。さらに例年、周辺のイベント会場で行われるアーティストのライブと日程が重なるため、周辺ホテルや飛行機が争奪戦になります。エントリーと同時に飛行機とホテルを予約してしまうのがおすすめです。
前々日、前日に事前受付を行い、ゼッケンや記念グッズを受け取ります。スポンサーになっているOnのTシャツが記念にもらえるのですが、シンプルなデザインで素材が軽く、通気性もよくて丈夫なため、普段使いもできるうえ、長持ちするのがありがたいです。
コース解説と戦略
スタートエリア
大通公園内に荷物置き場があり、ゼッケン(北海道マラソンではアスリートビブスと呼ぶ)に書かれたA〜Iまでのブロックごとにエリアが分けられています。自身の荷物置き場のエリアとスタート位置は前日に確認しておくと、当日のスタート前に焦って場所を探す必要がなくなるので必ずやって起きましょう。
スタートエリアにはスポーツドリンクやお水、塩飴、バナナなどがありました。
1つ私の失敗談を書きます。私は当日のスタートエリアでは荷物を置いて多少の栄養と水分補給をしてお手洗いを済ませて並ぶだけ、外にいる時間を極力減らして体力消耗を防ごうと整列30分前に大通公園に到着しました。荷物置きと栄養補給まではスムーズでしたが、お手洗いの大混雑に巻き込まれてしまい、最終的には整列には間に合いましたが緊張と焦りとでかなり消耗してしまいました。
お手洗いの大混雑を見越しつつ、しっかりとアップをする時間も考えて1時間前くらいには大通公園に到着していたいですね。まだ暗いうちに起きて軽くジョグをしてから朝食をとるランナーもいるくらいですから、何事も早めが良さそうです。もちろん、自身の体の疲労度と相談してくださいね。
〜10km 橋とトンネル
北海道マラソンのコースは序盤のコース幅が広いため、スタートして2〜3kmも走れば集団はバラけてきて自分のペースを徐々に掴めるようになってきます。10km付近までほとんどバラけないような大会もあるので、北海道マラソンは集団がバラけるのが比較的早いと感じます。
2023年大会はスタート時に気温が28度ほどあり、あまりにも暑いためランナーたちはペースをかなり落として走っていました。それでも、2〜3km地点ですでに大汗をかいてきつくなってきます。中島公園でお手洗いを兼ねて一度休憩を取るランナーも多くいましたね。最初の給水地点である5kmまでが本当に長い…最初の給水を迎える頃には体の水分はかなり抜けており、へとへとの状態でした。ほぼ全てのランナーが脱水状態で、集団のまま給水に殺到したら…大混乱になるのは容易に想像ができます。そこで、2024年大会からは2km地点に給水所が新設されました。それでも水だけかよって感じますが。
だいたい8〜9km地点にあるのが約1km続く創成トンネルです。坂を下ってトンネルに入る際に、トンネルがランナーでびっしり埋まっている景色が見られるのは感動なのですが、いざトンネルに入るとそこはまるでサウナ。トンネル内がランナーで埋め尽くされているので酸素が薄く、気温も湿度も高い状態なので呼吸が苦しく、腕の振りも重くなります。「早くトンネルを抜けてくれ、長い」と感じながら走った思い出のある、個人的に北海道マラソンで一番きついゾーンでした。
2023年の大会では、この創成トンネルを抜け、10km付近でリタイヤするランナーが多く見られました。当時の私より遥かに上のレベル(サブ3.5以上)と見られるランナーもちらほらリタイヤしていたのでやはりこの日の気温とトンネルの環境はそれだけ過酷だったのです。2024年地点からは10km手前にミストシャワーポイントが設けられます。トンネル内で体温も心拍数も上昇したランナーのクーリングに一役買うことを期待します。
公園や橋、トンネルとバラエティに富んだ最初の10kmですが、コース内の主なアップダウンがあるのもここまでです。10km地点からゴールまでは郊外の住宅街を抜けていくこともあってほぼ平坦です。北海道マラソンのコース内で最もタフなエリアである10km地点まででいかに体力を消耗せずに残しておけるかが中盤以降のレースを大きく左右します。
〜35km 変わらない景色と新川通
トンネルを抜けて10kmを通過し、補給や給水を済ませるとようやく体が少しずつ落ち着いてきます。10kmまでを冷静に抑えて走ったランナーであればこれを実感できるでしょう。10km〜35kmまでは郊外の幹線道路や住宅街エリアを進みます。どこを走っていても沿道の応援が途切れないのがありがたいです。坂など特筆すべき難所やポイントはないので、応援に乗せられながら淡々と走っていきたいところです。
15km付近、時間で言えば10:00頃だったでしょうか。その少し前から空には黒い雲が見え始め、怪しい天気だな…と思っていたところ、突然雷が鳴り始め、大粒の強い雨が降り始めました。雨というとランナーの敵のように感じるかもしれませんが、この日に限っては恵みの雨でした。上がった体温は下がり、路面は冷えて照り返しも弱まり、気温も下がり、一気に走りやすくなりました。
20km手前から始まり、片道約6kmの折り返しとなる新川通は景色が変わらないのですが応援が途切れない場所です。レース中盤の自然に無になれるところですので、景色が変わらない延々と続く直線といえど、さほどきつくはありませんでした。カーブやアップダウンがないことも要因かと思いますが、やはり応援と私設エイドにもかなり助けられました。
25km付近の前田森林公園に設けられるエイドは、北海道マラソンで一番大きな名物エイドです。炭酸飲料に補給食、そしてなんと言っても特徴的なのは雪玉が置かれていること。火照った体を冷やして、レース後半への活力になります。
地元の学生などの応援パフォーマンスが強く背中を押してくれるエリアです。全力で気持ちのこもった応援に応える走りをしなければ、と背筋が自然に伸びます。
〜ゴール 名所を駆け抜けてフィニッシュ
38km付近からは北海道大学に入ります。事前にコースマップを見ていると「北海道大学に入れば後ちょっと、ラストスパートだな」と感じるのですが、よく見るとキャンパス内だけでも2.5kmほどあるので、私は「大学はすぐ抜けられると思ったけど案外長いな…」とネガティブな気持ちで走ってしまいました。
そして、北海道庁「赤れんが」を抜けると最後の直線に入ります。北海道庁の敷地内は若干応援が途切れますが、最後の直線を埋め尽くす大観衆からの大歓声を浴び、最後に信じられないくらいの力が湧いてきます。最後の直線に入った瞬間に見える景色は一生忘れられないものになるでしょう。
北海道大学内は一部段差があり、狭い道でやや急なカーブがあります。赤れんが前の広場の石畳も不安定なので、35km以降は消耗した足にはきついつまずいて転びやすいポイントがあるので、ラストスパートをかけたくなりますが転ばないように注意も必要です。
ゴールエリア
大通公園で歓声を浴びながらいよいよゴールです。ボランティアさんからメダルやタオル、景品を受け取って公園内のランナーエリアに入ります。アイスももらえるのが嬉しいですね。
後は荷物を受け取ってホテルへ帰るだけですが、給水もしっかりしましょう。救護テントも充実しているので、体調に異常を感じている場合にはためらわずに立ち寄ってくださいね。
スポンサー企業ブースに立ち寄るのもいいですが、真夏のフルマラソンで自身で感じている以上に体は疲労しています。すぐにストレッチして栄養を摂り、シャワーを浴びて体のケアをしましょう。北海道マラソンがマラソンシーズン1本目で、秋にもう1本以上走る方が多いかと思いますので、疲労を早く抜いて次の大会に備えられるように努めるのがいいと思います。
暑さ対策のポイント
ここからは具体的なアドバイスに入ります。
まず、暑さ対策は次の通りです。
・帽子やサングラスで日差し対策
・ウォータープルーフの日焼け止めで紫外線対策
・露出は多過ぎず少な過ぎずの服装
・スタート前にスポーツドリンクを多めに補給
・最初はペースを抑えて走る
7〜8月には暑さのあまりしっかりとした調整ができていないランナーが多い中でのフルマラソンですから、途中リタイアするランナーが珍しくありません。年齢や経験値問わずに北海道マラソンの暑さは厳しいのです。日頃から暑さに体を慣らす(暑熱順化)練習は不可欠です。
そして当日の服装もとても重要です。まず、日差しで体温が上がらないように対策しましょう。体が日差しや紫外線に対応しようとするとそれだけで疲労してしまいます。帽子やサングラス、アームカバーなどを利用して体が日差しを直接受ける部分を減らしましょう。とはいえ、全身を布で覆ってしまうと汗が蒸発しにくくなりかえって暑いです。アームカバーやタイツなどで体が締め付けられるのを嫌うランナーもいます。練習のうちから様々な服装を試して、走りやすくかつ日差しを避けられる服装を見つけましょう。
なお、日焼け止めは多くのランナーが活用するかと思いますが、必ずウォータープルーフのものを選びましょう。走りながら体に水をかけて体を冷やす場合もあるでしょうし、そうでなくても汗で流れていってしまいます。汗で日焼け止めが流れてきて目に入ってしまったら大変です。
スタートエリアではスポーツドリンクを「ちょっと飲み過ぎかな…」というくらいに飲んでおきます。最初のスポーツドリンクの給水ポイントは5kmまでないわけですから、多めでいいのです。ちなみに、夏場の運動時に水では体内のナトリウム濃度が下がりってしまいます。そうすると、ナトリウム濃度を調節するために体は水分を排出しようとします。(つまり、尿意をもよおします)水だけでは逆効果になりかねませんし、走っている途中でトイレに寄ってしまってはタイムロスになります。水分補給は必ずスポーツドリンクで行いましょう。
スケジュールとホテル選びのポイント
次に、いつ札幌入りするのがベストか?ホテルは何を基準に選べばいいか?を解説します。
スケジューリングとホテル選びのポイントは以下の通りです。
前々日から入るとかえって疲れるし、費用がかさむ。
前日の夕方になると空港からの電車やバスが混雑し、バスは交通渋滞にも巻き込まれてスケジュールに狂いが生じる。
・ホテルは大通公園に近いほどいい
・ホテルは朝食時間に注意
前日までで最も重要なことは疲労を溜めないことと、参加受付を必ず済ませることです。前日20時に大通公園での参加受付が終了してしまうので、それまでに必ず行かなければなりません。
前々日から入ると慣れない環境に適応するためにかえって疲れてしまいます。旅先ということで食事内容も普段と違うものになってしまう可能性もあるので、可能な限り普段通りの生活を続けて疲労を溜めないようにしましょう。
しかし、前日の夕方になると電車やバスの混雑に巻き込まれます。特にバスは空港から大通公園まで1本で連れていってくれる分、利用者が多いです。満員になってしまい一本見送ってやっと乗車になる可能性もあります。その間、屋外のバス乗り場で立った状態で15〜20分程度待たなければならなくなります。さらに、夕方は札幌市内の道路が渋滞するので時間が読めず、到着が遅れていきます。
現地入りは、混雑にも時間にも余裕がある昼頃に、時間が読みやすい電車がいいでしょう。
そして、前日の夕食のお店は出発前に必ず決めておきます。札幌とはいえ夏です。暑い中でレストランを探して街中を歩き回り、疲労してしまうことがないようにしましょう。2023年時の情報ですが、うどん屋は案外少なかったです。前日は消化のいいうどんと決めていた私ですが、リサーチにとても時間をかけてしまいました。今考えてみれば、お茶漬けなど他のものも検討すべきでしたね。
私が感じた北海道マラソンの魅力
私は羽田空港から新千歳空港へ飛行機で向かったのですが、飛行機に飛行機に搭乗した時から気分が高まるできごとばかりでした。乗客がいかにもマラソンランナーという方ばかり、到着時にはランナーを応援する機内アナウンスもあり、何やらお祭りに向かう気分でした。
私が思う北海道マラソンの魅力は以下の通りです。
・街中がマラソン一色のお祭りムード
・気持ちのこもった応援が途切れない
まず、何といっても大通公園をランナーエリアに使っているところがすごいですよね。前日からランナー受付にスポンサーブースが多く出展しており、まさにお祭りの雰囲気です。元は公園から札幌駅までの官庁街と南側のすすきのエリアの商業街の火防線として作られたわけですが、冬には札幌雪まつりの会場になるなど、イベントごとでは活躍する大通公園ですよね。大会当日はランナー以外は立ち入りが規制され、ランナー専用のエリアになります。
コースは大通公園を出発し、すすきの、中島公園を抜けて札幌駅の東側を抜け、郊外へ。終盤で北海道大学と旧道庁を抜けて大通公園へ戻ってくるという名所を巡れるコースです。都市型マラソンの良さを存分に詰め込んでいると言えるでしょう。
都市型マラソンの多くはその場所の観光名所をコースに取り入れているものがほとんどなので、これに関しては北海道マラソンの強い個性とはいえないかもしれません。ですが、北海道マラソンのボランティアさんや沿道の札幌市民の方々の応援は日本一ではないかと思います。
アスリートがよく「応援のおかげで頑張れました」と言いますが、私はその意味を実感できました。北海道マラソンの応援は、全力で走るランナーに負けないくらいの全力なのです。お腹の底から声を出し、声を枯らしながらランナーに声をかけ続ける給水所の青年、額は汗でぐしゃぐしゃになりながら全身を使って声援を送り続ける吹奏楽女子、新川通で「頑張ってる姿がかっこいいぞ〜」とずっと立ちっぱなしで声をかけてくれるおばあちゃん。応援してくれる方々の強い気持ちを感じ、「応援に恥じない走りをしなければ」と奮い立たせられました。
そして、ゴールで心からの「おめでとう」「お疲れ様でした」の声をかけてくれるボランティアの女子。残暑の厳しかった札幌の方々の、熱い心を感じられる大会でした。
何度も繰り返しますが暑さは尋常ではないので、札幌市民で自宅が近い方でない限りはフルマラソンデビューにはおすすめしづらい大会ですが、マラソン好きな方には一度は走っていただきたい大会です。
今年走る方は前日受付から当日スタートまでの流れを、まだ走ったことがないという方は概要を、公式HPで確認しておきましょう!
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